一般社団法人協創型情報空間研究所
事務局長 飯箸泰宏
最近の脳科学の成果の一つに、場所細胞、格子細胞の発見があります。この発見に貢献した脳科学分野の研究者3名は、2014年のノーベル賞 生理学・医学賞 を受賞しています。
特定の場所に自分がいるときに脳内(海馬の中)の特定の細胞が興奮し、別の意味のある場所に移動すると海馬の中の別の細胞が興奮します。この細胞たちを場所細胞と言います。場所細胞は生命体が重要だと思う場所で発火する性質があり、おおむね一次元的な並びを示します。
「川沿いに歩くとこの辺りにエサがあるはず」「森のふちを歩いてゆくとこの辺りで熊に出会う」「道なりに進むと右手にケーキ屋さんがある」などの行動に便利なようになっているようです。しかし平面座標上のどのあたりにあるのかについては、ほぼ情報をもっていません。
これらの場所細胞とは別に、海馬に隣接する嗅内皮質(および前海馬支脚、傍海馬支脚)に「格子細胞」というものがあり、この「場所細胞」と連動していることが分かりました。
格子細胞は、細胞を線で結べば正六角形(または正三角形)が描けるように配置されていて、平面状の位置関係を表しているのです。
空間認識のための脳の機能には、ほかにもあることが次々と発見されていて、例えば、「頭方位細胞(頭が東西南北のどちらを向いているかを保持する細胞)」や「境界へベクトル細胞(壁際、崖っぷちなどの限界の位置を記憶しておく細胞)」があります。
これらは、どれもヒトを含む哺乳類すべての「前言語認知能力」の一部を構成するものであることに注意していただきたいと思います。
実は、脳内には様々な周波数とリズムをもった電気的な波動が行き交っていますが、海馬にはこれらの空間認識細胞とともに「時間細胞」があって、波動の位相差を利用して時間を把握するという離れ業も行っていることが分かっています。
ダンスや歌などの「前言語的活動」がヒトをワクワクさせる理由が何となくわかりますよね。
一般社団法人協創型情報空間研究所事務局長
飯箸 泰宏
いいはし やすひろ
1946年(昭和21)生まれ 。現役のシステム系講師。都立足立高校でビートたけしと同級。東京大学理学部化学科卒。同情報科学科研究生修了。1981年に株式会社サイエンスハウスを起業し、同時に教壇にも立つようになった。以来会社経営では37年、慶応大学、法政大学、明治大学等のシステム系教員としては38年の経歴を持つ。教え子は8000人を超える。精神障がい者の支援ボランティアにも従事してきた。専門は情報科学で、人工知能、移動体制御などでの実績がある。最近は、脳科学、心理学、哲学を束ねる「知能学」の創出を悲願にしている。
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