ヘルベチカと聞くと、小説の主人公の名前か、はたまた高級な海外のブランド名と思いますが、フォントの名称です。フォントとは、印刷する文字やパソコンやスマホの画面に表示する文字の形(デザイン)の名称です。フォントの種類とその数は果てしなくあります。ヘルベチカはその中でも、世界中で最も愛される美しい書体です。
ポスターやチラシ、冊子や手帳など文字で構成される印刷物は、使用するフォントによって読み手に与える印象が変わります。固いイメージの書類には固いフォント、やわらかいイメージの書類にはやわらかいフォント、注意を促すポスターは”気をつけて!”と訴えかけるようなフォントをデザイナーは選んで使います。というようにフォント選びは重要です。
初代の手帳『M365』のページの中は、「月、火、水、」などの日本語は使いませんでした。全て英数字にしました。初代の手帳にわたしが選んだフォントは、コンピュータの黒い画面で使われているフォント、ゼロ「0」のまん中に「・」があり、ゼロとオー「O」が見分けが分かりやすいフォントでした。
このフォントを手帳に使ったところ、まん中に「・」があるゼロを見るのが初めてだという方が多かったのです。このようなフォントを使った手帳はありませんでした。文具・手帳デザイナーの方に意見を聞く機会がありました。「この手帳は、フォントが形にしてもサイズにしても主張しすぎている」と言われました。「もっと手帳を使う人の目線でフォントを選んだ方がいいのでは」というアドバイスをもらいました。
3代目の2023年版は、フォントサイズを2ポイント小さくしました。これでスケジュールを書くスペースが広がりました。2日連続、3日連続などの横線を引いて書くスケジュールが書きやすくなりました。日付のすぐ横に書くこともできるようになりました。フォントは日本語も英数字も等幅のGoogleとAdobeが共同開発した「NOTO Sans Japanese(ノト サンズ)」を使いました。フォントのセッティングに一番苦労したページは、見開きで一年間を見渡せる「曜日優先カレンダー」でした。何度も文字のサイズ、文字間、行間を調整した甲斐あって、美しいぺージになったと思います。
3代目『M365』は、文字が主張しないデザインに仕上がっています。この手帳を使う人の顔を思い浮かべながら、手帳を使う人が快適に、いいスケジューリングができるように願いを込めて作りました。どうか、手帳『M365』にたくさんスケジュールを書いてください。
中島正雄