11月です。文房具売場の一番いい場所に、手帳が並べられる季節になりました。わたしが初めて買った手帳は、高校生のとき、藤沢の東急ハンズで見つけたイノベーターの手帳でした。グレーのカバーに「innovator」と縦に入ったロゴが格好良かったのです。わたしが社会人になったころはシステム手帳が流行っていました。でもわたしは、背広の内ポケットに入る大きさのスタンダードな手帳を選びました。
そのころわたしは、西順一郎先生の「マネジメントゲーム(MG)」とコンピュータのワープロ感覚のデータベース言語の「マイツール」の勉強をはじめました。西先生はいつもマイツールでやったスケジュールを紙にプリントアウトして持っていました。わたしにはその紙が、スケジュールが印刷されたレイアウトが、紙の余白に先生が書き込んでいる文字が、とても美しく見えました。わたしはMGよりも、西先生がマイツールでやっている”スケジュール管理”と”名簿管理”を知りたいと思いました。わたしは憧れの人が使っている道具を見ると、それが欲しくなります。わたしが西先生から学んだことは、マイツールのテクニックではありません。自己実現するためのスケジューリングと名簿を整える智恵でした。
世の中がスマホ時代になったころ、わたしもスケジュールをGoogleカレンダーにしました。新しいおもちゃを手に入れたようで、しばらく夢中になりましたが、だんだん飽きて来ました。私自身つまらない人間になっていくような気がしました。人と会うための大事なスケジューリングを、ただ便利だからといって、流行りのツールに任せていいのだろうかと思うようになりました。そしてスケジューリングを紙の手帳に戻すことにしました。
デジタルと紙の違い、それは余白です。紙の手帳には余白があります。余白に書いてあることが後になって発展することがあります。余白には、文字も書くけれど絵や図を書いたり、何かを貼ったりします。キチンとしたフォーマットの中にある”余白”が、自分の中になる何かを更に引き出すのではないでしょうか。
もう一つは、デジタルは跡形も無くキレイに修正してしまうことです。作家の林真理子さんが手書き原稿にこだわる理由がわかります。修正した跡がわかる方がわたしたちの頭の中に近いと思います。わたしの頭がついて行ける感じです。
手帳売場には、色々な個性と機能を持った手帳が並んでいます。その中から自分に合った手帳を見つける、出会うのはなかなか大変です。そこで、人と会うスケジュールが沢山書き込める手帳『M365』を作りました。もちろん、余白が沢山あります。どうか、手帳『M365』に人と会うスケジュールを沢山書き込んでください。
中島正雄